2018年11月8日号

今年9月、75歳で亡くなった女優の樹木希林さん。全身がんであることを公表した後も“死ぬ死ぬ詐欺”と自らを笑い飛ばした▼「あとは、じぶんで考えてよ」「サヨナラ、地球さん」という生前の言葉とともに、舌を出した遺影や家族写真を大きく全面に使用した企業広告が先日全国紙の朝刊に掲載され、亡くなっても存在感が光る。紙面では「十分生きて自分を使い切ったと思えることが、人間冥利に尽きるんじゃないかしら」「面白がらなきゃやっていけないもの、この世の中」といった本人の言葉が続く▼人生100年時代、どう生きるか、どう死ぬかについて、自分の思い通りにできないこととは知りながらも、改めて深く考えてみる。(金)

2018年11月1日号

 芸術の秋。大和市の「文化芸術に関する市民アンケート(平成30年)」によると、過去1年間に1回以上の鑑賞活動をした内容は、歴史的建物や遺跡、写真などでは男性の比率が若干高いが、映画、音楽、観劇など、全体的にみると女性の関心が高い結果が出ている▼また、鑑賞しなかった理由は「時間的余裕がない」がトップで、10代~50代が特に多い▼芸術とは人生を豊かに彩り、明日への活力となるもの。忙しい現代だからこそ、時には生の音楽、迫力の映像、演者の息づかいを感じられる芸術に触れてみてはいかがだろうか。ホールや映画館の扉を開く時、その先の胸が高鳴る時間をぜひ味わってもらいたい。       (中)

2018年10月25日号

 ジブリ映画で有名な「魔女の宅急便」の原作者である83歳の角野栄子さん。今年3月、国際アンデルセン賞の作家賞を受賞した。児童文学のノーベル賞ともいわれる作家賞、日本人では3人目▼魔女を知らない街の人たちの偏見に悩みながらも「やりたいことは自分で決める」「心配は起きた時にすればいい」と、ほうきで飛ばずに歩くことで道を切り開く主人公▼子どもから大人まで、人生を肯定するヒントがそこに隠されている「読んで読んで読むことで、その人の中にその人の辞書ができていく」と話す角野さん▼人を惹き付けたり自分を表現することができる「自分の言葉」を持つことが、自分の中の個性を見つけ出すきっかけになるのかもしれない。 (金)

2018年10月18日号

 「患者さんにあなたのおかげと言われる時が何よりも嬉しい。その上に賞をいただき、幸福な人間だ」とノーベル医学・生理学賞受賞の本庶佑さん▼治療に生かしたいという強い思いがあったからこそ、成功につながった。「ナンバーワンではなく、オンリーワン」「教科書を簡単に信じず、納得するまであきらめないこと」が研究者には必要と話す▼76歳の本庶さんは多くのがん患者を救いたい。研究を続けると現役へのこだわりを話す一方、今回の賞金で若手研究者支援の基金を設けると発表。研究の継続と、後進育成への意気込みを感じる▼何かを成し遂げた人から学ぶことは多い。物事に不可能はない、必ず道があることを教えてくれる   (渡)

2018年10月11日号

 コンビニや居酒屋などで見ることが増えた外国人の店員。労働力の約50人に1人が外国人となった一方、嫌がらせを受けるケースも相次ぐ▼「まともな日本語を使え」、「日本人に代われ」。法務省の在日外国人への調査では、約3割が「侮辱されるなど差別的なことを言われた」と回答した▼日本での経験を母国の発展に繋げる技能実習制度も、賃金不払いや劣悪な労働環境で国際的な批判を受ける。外国人が安心して働ける環境を整備しなければ、日本の国際的地位は急降下線を描く▼日本人としての品性が問われるばかりか、国としての品格も落としていく▼今や外国人労働者なくして成り立たない日本。「おもてなし」の心はどこへ。世界中に訴えたはず。    (諒)

2018年10月04日号

 民間人として世界初の月周回旅行。夢のような計画で、スタートトゥデイの前澤友作社長と契約を結んだのが、米・宇宙開発ベンチャー企業「スペースX」だ。CEOのイーロン・マスク氏は、今や経済ニュースで目にしない日はない▼会長職を務める電気自動車ベンチャー・テスラ社では大量生産に大苦戦。度重なる経営危機も、週100時間働く超人的な努力で乗り越え、大衆を熱狂させてきた▼「アイデアを実行することは、思いつくより難しい」と語るイーロン氏。火星への移住計画など、不可能を可能にする挑戦は行動する意義を教えてくれる▼夢を語る人間に支援は絶えない。日々のニュースに刺激を受ける毎日である。      (諒)

2018年9月27日号

 9月26日から応募が始まった、オリンピック・パラリンピックボランティア。その募集要項に問題があると、世間から疑問が挙がっている▼10日間以上、1日8時間程度の勤労が条件。規定の交通費と食費は出るが、宿泊費などは払われないようだ。学生は「行きたくても全日程を東京で過ごす余裕は無い」と話す。とあるアンケートでは、半数以上が「参加したくない」と回答した▼「ブラック」「やりがい搾取」という批判に「やりたくなければ申し込まなければ良い」とIOC副会長。高圧的に話すその姿は、意見を抑圧しているようにも見えた▼ボランティアとは本来自発的に行うもの。強要ではない。お互い納得のいった活動になると良いのだが。 (巴)

2018年9月20日号

 ここ数か月を思い返せば、異常なまでの天変地異に嘆息するばかり。猛暑、豪雨、誰も経験したことがないような台風、地震……。日本人が恐れる災害がすべて押し寄せてきたような夏▼近畿地方の一部は未だに電力が復旧していない。強風に倒れた電柱は、800本を超えた▼停電発生直後、関西電力はオペレーター500人体制で応対に臨んだものの追いつかず「対応が十分ではなかった」と謝罪会見を行うことに。電話が繋がらないことは不安だが、職員だって被災者だ。天災なのだからと思うのは、被害がない立場だからか▼SNSには日々復旧した街の写真が上がっている。見えないところで働く人びとあっての生活だと、改めて噛み締めたい。   (巴)

2018年9月13日号

 「日本列島どうなっているの?」と思うくらい次々と起こる天災。西日本豪雨、台風21号に追い打ちをかけるように平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震が起きた▼異常気象とは数十年に1回程度しか経験しないまれな現象を言うが、これだけ多発する現実を直視したい▼人は災害などに遭うと、自分に都合の悪い情報を無視する正常性バイアスという心理が働き、「自分は大丈夫」「まだ大丈夫」と思い込み、それで逃げ遅れたりするという▼「自分の身は自分で守る」。平常時は日常の暮らしが一瞬で奪われることを思い描くことは難しい。災害はいつでも「わがこと」となり得ると考え、備えを怠るなと心しておきたい。  (渡)

2018年9月6日号

 娘の学習帳に書かれた1から100までの数字のマス目が、ふと人生の年表に見えた▼98歳で大往生した祖父は、20代で戦争を経験。3歳になる娘のマスには、今後どのような文字が刻まれるのか▼立教大学浅井春夫名誉教授の論文『戦争をする国・しない国の分岐点』(2015年)には「戦後70年間、戦争をしなかったのは国連加盟国193か国のうち8か国となっている」とある。日本はその希少な国の一つ▼平成最後の夏が終わった。奇跡的な平和の中、暮らしているはずの私たちの耳に届く、異論や反論、多様性を許さない社会の息苦しいニュース。新元号を戦争の時代にしないためにも、大人の生き方が問われている。   (丸)